転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


417 長い話し合いの終わり



 前回の内容ですが、過去の話と統合性が取れないところがあったので小説家になろうの方にアップしたものに一部加筆してあります。

 もしよければ、まずそちらを読み返してから今回の話を読んで頂けると幸いです。



 ルディーン君の商会で売るものも決まったし、後は細かい部分を詰めて話を終わらせようと思ったのじゃが、そこでルルモア嬢がこんな事を言い出したのじゃ。

「フランセン様、肌用石鹸を売り出すと言うお話は解りました。ですが、その石鹸の特許に関してはどうなさるおつもりですか? フランセン様とバーリマン様が開発したと発表するのであれば、ルディーン君の名で特許申請する事はできませんが」

 先ほど、将来的にはルディーン君の名で二つのポーションの存在を公表すると話しておったであろう?

 じゃがわしとギルマスが肌用石鹸を開発したと商業ギルドに登録したら、後で困るのではないかと彼女は考えたようじゃな。。

 しかしな、そのような心配はせずともよいのじゃ。

「それは何の問題もない。なぜなら、特許申請そのものをせぬからな」

「特許申請をしない?」

 ルルモア嬢は特許申請を行わないなどとわしが言い出すとは、まったく思ってもおらなかったのであろうな。

 よほど驚いたのか、口を開いたまま目を見開いて固まっておる。

 じゃがな、少し考えれば当たり前ではないか。

「何をそれほど驚くことがある。そもそも、特許とは何じゃ?」

「はっ、はい。新たに生み出した技術を申請し、誰かがそれを勝手に複製して開発者の利益を損なわないようにする制度ですね」

「うむ。その通りじゃ。だからこそ、特許を申請する場合、その作り方を事細かく記載する必要がある」

 わしがここまで語ったところで、ルルモア嬢はわしがなぜ特許の申請をしないと言ったのか気が付いたようじゃ。

「そうですわね。失念していました」

「うむ。先ほども話した通り、この肌用石鹸を作るのにはルディーン君のポーションが不可欠じゃ。そしてそのポーションの存在を秘匿する以上、特許申請などできるはずが無いのじゃよ」

 そもそも、たとえこの石鹸の存在を知ったとしても、それを複製して売り出すなどと言う事は誰にもできぬじゃろう。

 なにせわしやギルマスは錬金術に関して、この帝国の中で頂点と言ってもよい実力を持っておる。

 そのわしらが作れぬ二つのポーションを作り出せるものなど、ルディーン君を置いて他にはおらぬからのぉ。

 そしてそのポーションそのものを秘匿しておるのじゃから、多くの者が研究を重ねたとしても同じようなものを作る事さえかなわぬであろうな。

「しかし、フランセン様。錬金術には解析と言う技術があるのでしょう? ならば、売り出した石鹸を調べれば製法が解るのではありませんか?」

「いやいや、それは取り越し苦労というものじゃ」

 確かに錬金術の解析を使えば、この石鹸にはセリアナの実から取った油を使用しておると気付く者もおるじゃろう。

 じゃが、そもそも石鹸を作るのには油が必要なのだから、その油にセリアナの油を使っておる以上、そこからポーションにたどりつける者などまずおらぬ。

 なにせあの油の成分が肌を蘇らせるなどと言う事は、わしらでさえ知らなかったのじゃからな。

「実を言うとな、ルディーン君が作ったポーションの成分に肌や髪の毛の再生効果があるなどと言う事は、彼がこの二つのポーションを持ち込むまでは誰も知らなかったのじゃよ」

「それにですね、元々のポーションを調べるのならばともかく、他のものと混ぜて作った石鹸からではどんな成分に魔力が込められているのかを知るのはまず不可能でしょうね」

 なにせルディーン君が作ったポーションは、わしら錬金術師の常識からは考えられないほど多くの成分に魔力が注がれておるからのぉ。

 ギルマスの言う通り、ポーションそのものを調べるのならともかく、石鹸から肌用ポーションの成分を調べる事などできはせぬじゃろうな。

「と言う訳で、わしらが語らねば肌用石鹸を売り出したとしても、それを複製する事は不可能。じゃから特許など申請する必要は無いのじゃ。

 もし懸念があるとすれば、石鹸を作っている工場内での技術盗難くらいであろうな。

 じゃが魔道リキッドで薄めたルディーン君の肌用ポーションをわしとギルマスで用意し、それを工場でセリアナの油を含んだ石鹸の材料に混ぜて作らせれば製法そのものが他に漏れる事も無かろうて。

「なるほど。でしたら複製される心配はありませんね」

 一通り説明を聞いたルルモア嬢は、そう言って納得をしてくれた。

 じゃがな、今度は号検車ギルドのマスターがわしに聞いてきたのじゃ。

「フランセン老、一般的な錬金術師はそれでよいと思います。ですが、もし帝国府の方からこの石鹸の成分を尋ねられた場合は、どうなさるおつもりなのですか?」

「そんなもの、教えるわけが無かろうと答えるだけじゃ」

 いかな帝国府と言えど、誰かが開発した技術を勝手に自分のものにする事などできぬ。

 これに関してはきちんとこの国の方にも記されておる事なのじゃ。

 たとえ皇帝陛下であっても法を力ずくで破る事などできぬのじゃから、心配せずとも帝国府におる上位貴族たちとてその様な事を言い出す事は流石にないじゃろうな。

「それとな、皇帝陛下に献上する際、特殊な素材が必要な為おいそれと生産量を増やす事はできぬと伝えるつもりじゃ」

「それは何故でしょう? 先ほどまでのお話からすると、かなりの量を生産できるように思われるのですが」

「何、簡単な事じゃよ。量が作れるとなれば、自分たちでも作れるのではと思い、こちらを探ろうとする。じゃが、元々材料が希少なものとなれば、たとえ製法が解ったとて作れるとは限らぬじゃろう?」

「なるほど。確かにそうですな」

 これはわしも話しておるうちに思いついたのじゃが、人というものは隠されておると知りたいと思うものじゃ。

 そしてそれが自分の利になるのならば、その欲望はより強くなるであろう。

 ならばじゃ、その利をなくしてやればわざわざ法を犯してまで探ろうとするものは確実に減る。

 材料には希少なものを使っており、なおかつ秘密がある場所はこの広い帝国の端にあるこのイーノックカウじゃ。

 探るのにかかる金もさぞかしかさむであろうからのぉ。

 そして調べさせた結果、もしその材料が自分には決して手に入らぬ物じゃったとしたら、その金はすべて水の泡じゃ。

 我がフランセン家を敵に回し、なおかつ法を犯してまで調べても自分の理にならぬかもしれぬとなれば、わざわざ調べようとするほどの馬鹿はまずおらぬじゃろうな。 


「では当面の間は当初の予定通りわしの家の者を使ってルディーン君の資産を運用し、その間に肌用の石鹸を製造する準備を整えるという事でよいな」

 ルディーン君の商会で肌用石鹸を売り出すとしても、すぐに生産が始められるわけではない。

 製造する工場も必要じゃし、何より作る人を手配せねばならぬからのぉ。 

 じゃから話し合いの結果、商会を立ち上げてからしばらくはルディーン君の資産運用を行い、準備が整った後、石鹸を売り出す事に決まった。

「そろそろルディーン君も、退屈し始めておる事じゃろう。話もまとまった事じゃし、そろそろ戻るとするか」

「そうですわね、伯爵」

 こうして長くて退屈な話し合いは終わり、かわいいルディーン君の待つ部屋へとわしらは帰っていくのじゃった。


 過去の話を読み返したところ、肌用石鹸はルディーン君が注した3つの成分を加える事でバーリマンさんでも作れると言うものでした。

 なので前回の話に一部加筆して、ルディーン君のポーションを使う事で簡単に肌用石鹸を作れると言う設定をでっちあげましたw

 まぁ実際の所、わざわざ3つの成分を見つけ出して抽出し、それに魔力を注ぐよりも今あるポーションを利用して作った方が絶対簡単ですよね。

 元々この石鹸を作る事になったきっかけである村で使っている水で薄めたポーションも、要はこれを同じようなものなのですから。


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